天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ
「何ヶ月、会えなかったと思うとるんじゃ?」
碧い眼を細めながら乙は右手に力を込める。ぶちり、また、音。息が顔に掛かる程、彼女は顔を近付けると視線で魚尾を舐めつけた。端正、というよりも妖しい色気を持った彼の顔に僅かな苦悶が浮かぶ。
もっとぐちゃぐちゃにしてやりたい。泣いて、鳴いて、悲願するみたいに啼哭して、だなんて嗚呼、ちがうちがう。そうじゃない。そうじゃないのだ。ただ、ただ久しぶりに見たあなたが。
頭の中に飽和する醜悪な感情を押し留めて、眼前の男を睨み付ける。すると、呆れたみたいに眉を歪めて、口を開く魚尾。
「姫でしょう?下界の高校行って偵察してこーいっつったのは」
「にしてもじゃ!来れただろうに!何ヶ月もあける必要なかったじゃろう!?鬼!間抜け!下半身不能!」吠える、吠える吠える。
憤怒に理性を預けて、乙は彼の陶磁器の様な首に噛み付いた。歯が皮膚を突き破り、流れ出る血が水中に筋となって浮かんで消える。あまりのことに音を忘れた空間に、くつり、と歪な笑い声。喉仏が上下していることから、魚尾が喉で嗤っていることが用意に想定出来た。
悔しくなって、顔を向ければ、優しい目。
「外と内の時間は違うし、会おうと思っても遠いし、夏や秋には補習があるし。ごめんね」
大人な対応に乙は眉根を寄せる。視線を落とせば、傷の塞がりかけた首筋。骨折していた骨も何れ元通りになるのだろう。焦れていた待女達も姫が黙り込んだことを良いことにここぞとばかりに姫を立ち上げさせると、強引に部屋の中へと引き戻そうとする。