天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ
今にも崩れ落ちそうな、背中に。
「何で、ですか」
誘拐されていた愛を助けた青年──龍太郎は、傷だらけで歩いていた。覚束ない足取りが、この乱闘がどれ程過酷な物かを体現していて。罪悪感を感じ、愛は問い掛ける。
「何で私なんかを、助けてくれたんですか」
「あ?」
振り向いた猛禽類の如き眼光に、愛は固まる。蛇に睨まれる蛙、だ。咄嗟に目を逸らして、下を向く。夕暮れのオレンジが、廊下の所々に貼り付いている。埃の匂いが、懐かしい記憶に声を掛ける。今日の夕暮れは、少なくとも、優しい。
「私なんか、だって、いらないのに」