天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ
恐る恐る言葉を紡いで、押し黙る。沈黙は硬質な鉛となって彼女の肺に落とされた。夕暮れは、確かに優しい筈なのに。生温さは、人を不安にさせる。
「だって、さして能力が高い訳でも、可愛い訳でも、優しくて聡明でもない。良い事だって言えないし、強くだってないし、ほら、だって」
「あー、だな」
龍太郎は、乱暴に髪の毛を掻きながら、言った。愛は予想もしなかった冷たい返事に、瞠目する。ずっと憧れていた元気な彼は、強くて、タフで、もっと、こう。
「お前なんて、だと思う」巨木が、廊下に立ち塞がっている。そう錯覚してしまう程に、彼は力強く仁王立つ。
「でも俺だって、俺なんか、だ。憧れってさ、理解には程遠いんだよな。愛が好きな学園長だって、彼なんか、かもしんねえよ。誰だって、なんか、なんだ」