天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ




クリスマステロの行われる会場で、乙はシャンパンと睨めっこをしていた。透明な、黄金色の液体の中の泡沫は何処からともなく現れて、浮上しては、消える。それは海底で輝く真珠を彷彿とさせた。色こそ違うものの、そのような感じがする。

ワイングラスの中のシャンパンが揺れるのに合わせて、映る景色までもがきらきらと揺らめいて。美味しそうだ。乙はワイングラスを傾けて、シャンパンを飲もうと口を開く。

しかし、その冷たいグラスに乙の紅色の唇が触れる直前、何者かが彼女の背後から手を伸ばしてそれを奪い取った。彼女の青色の瞳が、グラスを追って、後ろを向く。同じ碧色の瞳が、優しく此方を見つめていた。


「魚尾、」

魚尾と呼ばれた青年は、へにゃりと崩れた笑みを浮かべると、取り上げたグラスから手を離した。グラスは重力に従い、落ちて、落ちて。

地面に当たると同時に割れると思われたそれは、不思議なことに地面に波紋を作り、“向こう側”へと沈んでいった。追従する様に、シャンパンの雫がきらきらと舞い散る。雫に映る逆さまの景色が、煌びやかに揺らめく。


< 62 / 97 >

この作品をシェア

pagetop