天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ
「な、何でもないんです!」驚いた愛は真っ赤な顔をして、ソファーの端まで避けて行く。
「本当に?」
アルベルトは意地悪く、視線を愛へ投げかけた。眼鏡の奥の、深い瑠璃色をした虹彩は、本物のラピスラズリに似ている。古代ローマの博学者プリニウスはその美しさからラピスラズリを“天空の欠片”と呼んだ。複雑で繊細な色が幾重にも連なり、星の輝きを彷彿とさせる金色が散り、見る角度によって表情を変えるそれは、多くの人間を虜にする。
魔眼、確かにそうなのだろう。人を魅了して止まない美しい半貴石だ。幸運を呼ぶとされるラピスラズリは、聖なる石。嘗ては宝石や黄金と同じ価値を秘めていた財宝である。
目にはめ込まれた宝石、だなんて、まるで幸福の王子のようではないか。彼は幸福をツバメと供に多くの人に分け与えた。では、アルベルトは幸福を誰かに与えただろうか。考えて、思い返すのは──生徒達の笑顔。優しい居場所。そうして、何だか誇らしくなる。ツバメもこのような気持ちだったのだろうか。
しかし、だ。そもそも、私は本当にツバメの位置に、いるのだろうか。愛は思って、アルベルトを眼差す。キスだって、気紛れだったのではないか。彼の中では、慰めだったのではないか。負の感情が心臓に巻き付く。黙っていれば、汚い部分をアルベルトに見咎められてしまいそうで、愛は口を開いた。