天の神様の言う通り、ここは素晴らしい学園ですっ




誠一郎は、見えない。物理的にではない。触れられるし、会話を交わすこともできる。ただ“見えない”のだ。暗闇に佇む影のような、水中に落ちるガラスのような。

日音子は休み時間中、こっそりと彼を盗み見る。重たい印象を与える、目元まで伸びた前髪。体型は中肉中背といったところか。平々凡々な容姿で、目立った存在ではない。モブキャラと言われれば、そうかもしれないと大方の人間が首肯するだろう。

しかし、日音子はその印象に何処か違和感を感じていた。それは、表面のつるりとした木板に傷が一つ付いているかもしれない、程度の小さな違和感だ。──けれどその傷は、木板をも腐敗させてしまうほどの、毒性を持っている。

彼への違和感が確実なものになったのは、幽霊が出ると噂されている場所へとクラスメイト達で訪れた時だ。

驚いたことに、彼には霊が見えていて、故意的に霊を連れていた。除霊能力よりも霊媒体質の方が勝る日音子は、下手をすれば自らが憑依されてしまうので、何も出来なかった。


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