小悪魔な唇【密フェチ】
彼がカップをテーブルに戻したのを見届けて、私は再度テレビに集中した。
画面の中では、逃げようとするヒロインを引き止め、強引にキスをするヒーローがいた。
キスがしたいというのもあるけれど、奪われるようなキスがしたい。
彼は優しいからいつも私のタイミングを窺ってくる。
たまには強引にされてみたいのに。
彼に、あの唇で――。
そんなやらしいことを考えているなんて、彼には秘密。
「……いいなぁ」
キスのことばかり考えていたせいか、テレビを見て思わず呟いてしまった。
私は慌てて口を抑え、呟きが聞こえていないか、彼の方をチラリと確認した。
まさかドラマのようなキスがしたいと思ってるなんて、知れたら呆れられる。