小悪魔な唇【密フェチ】
「ん?」
雑誌を見ていた彼は、私の視線に気付いて小首を傾げた。瞳は穏やかで、肉厚な唇は微笑を浮かべている。
この様子だと聞こえていないみたい。
「ううん、何でもないよ」
私は大袈裟に首を振った。彼は少しだけ笑って、赤い唇から白い歯を覗かせた。
そのコントラストがまた私の欲求を刺激する。
「そう」
軽く相槌を返してくれた彼は、雑誌を閉じてテーブルに置いてしまった。
いつもならそのまま雑誌を見続けるのに。
どうしたのかとオロオロしていると、彼が身体をこちらに向け、顎をグイと持ち上げられた。
「駄目だよ、素直に言わなくちゃ」
「え……あっ」
制止する間もなく、性急に重ねられる唇。肉厚なそれが貪るように私の唇を食んでいく。
いつもの彼からは考えられない、呼吸さえも奪われるようなキスに体の芯が熱くなった。
離れた唇はてらてらと濡れていて、今までになく妖艶。
「こういうキスがしたいんでしょ」
彼の唇が小悪魔に笑った。
【fin】