失くした何か
「心に穴が開いたようだ、って……上手い表現の仕方だよな。俺らの心境そのままだ」
――嗚呼、確かに。
心に大きな穴が開き、何かが足りないような感じだ。
『ラルさん、悲しい?』
ラルさんを見て問うと、力無く微笑んで頷き、小さく「とても、な」と呟いた。
そうか。
私は今、悲しんでいるから、涙が出ているのか。
―――これが、“悲しい”―――
私は無意識の内に目を閉じて、今までを思い出していた。