『若恋』若恋編
龍神会崩壊
車のドアを開けた…俺の腕の中で、静かに大きく息をする丸井の表情は穏やかで。
いま。
丸井の命の火が燃え尽きるところだなんて信じたくはねえ。
―――抱きかかえている丸井の体。
りおが握った丸井の手のひらも次第に冷たくなっていく。
命の灯火が尽きてしまうのを感じずにはいられない。
「……お願い」
必死に丸井の手のひらをりおが擦り続ける。
「丸、眼鏡、さん…」
りおの呼び掛けに応えて丸井がうっすらと瞼をあけた。
「…向こうで、むすめ、に、会えるで、しょう…かね?」
微かに笑みをこぼす丸井に泣きたいほどの息苦しさを感じた。
「…うん。きっとね」
血だらけの丸井にはりおの手を握り返すだけの力はもう、ない。
りおの目から涙がボロボロ溢れ落ちて止まらない。
「…奏さん、」
丸井を抱き抱えている俺を見つめる。
お願い。丸眼鏡さんの命をこの世にとどめて。
わたしたちを助けてくれてまだ恩返しもしてないの。
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