『若恋』若恋編



二階の映画鑑賞室か?

ドアを開けると真っ暗で居た形跡もない。


シャワーか?
いや、違うのか?


姿が見えない。
探すほどに焦りがくる。


いない。
この屋敷内から黙ってどこかへ行くのは無理だ。



「若、りおさんの姿がありませんね」

「………」

「どこへ行ったのでしょう?」



りおが学校から戻ってきてから誰も姿を見てないと言う。


どこだ?

わからない。


空全体に立ち込めていた雨雲から大粒の水玉が落ち始めた。


「雨が降ってきましたね」

「………」

「まさか外には出てないでしょうね」

「………」

「本降りになってきましたね」


窓の外を見上げながら榊がため息をつく。


「―――そと?」



屋敷の中を探してない場所がひとつだけある。

たった一ヶ所。



窓の外は……泣き止まない空。


いきなり思い当たる。




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