『若恋』若恋編



ひとつだけ探してない場所。

一階、テラスから出て池がある中庭。



テラスの窓を開け放し外へ。


「若!裸足です!」


榊の叫びに構うことなく濡れて前が見えなくなっている外へ飛び出した。

叩きつける雨の中を走る。



「……いな、い?」


草花の中に、りおはいない。



「りお?いるのか?」

返事がない中、首を巡らす。


撫子、紫陽花……白くて小さい花。

雨に打たれて草花が震えている。



「……いなかった、か」



いないと諦めて、引き返し掛けて、りおが好んで着る薄いピンク地の浴衣が見えた。


「?」

次第に強くなっていく雨の中でしゃがみこむりおの姿が。


「りお?」



ゆっくりと。

ゆっくりとりおがこっちを向く。


いつからそうしていたのか、薄いピンク地の浴衣が透けて肌に張り付いている。



「……そう、さん?」




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