『若恋』若恋編
何も映していない瞳。
俺を見ているのに虚ろだ。
いつからそうしてここに居たのか…?
りおの唇に色がない。
「りお」
胸の奥が悲鳴を上げた。
濡れそぼったりおが手にしていたものが雨に打たれて落ちた。
ズタズタに切り裂かれたジャージ。
「!」
隠すこともできないままのりおを見つめる。
怒りで狂いそうだ。
このまま太刀を持ち飛び出してりおを傷つけた連中を斬り殺しに行きたい。
どんなに悪意があってもここまでやられるとは思ってなかった。
「あ、の、ね、そう、さん」
ギシ、
濡れた下駄が池の畔で滑ってりおが体勢を崩し咄嗟に後ろからりおを抱いた。
「……何も、言うな」
「そう、さん」
雨に泣くりおの体を抱き締める。
何も気づけなかった愚かさに歯噛みする。
りおを傷つけた連中。
元を正せば俺が。俺が原因だ。
俺と関わらなかったら。
俺が遠くから見るだけだったらこんなことにはならなかった。