『若恋』若恋編
りおの夢を見た。
思い出したくない夢。
胸が張り裂ける映像がまだ心の中にある。
グニャリと歪んだ白い空間にまだ気持ちは囚われている。
「……仁、屋敷へ戻る」
「ば、バカヤロ!成田んとこ行くぞ!」
「頼む。屋敷へ戻りてぇんだ」
「血を吐いたんだぞ!このまま帰れるかってんだ!」
「頼む」
「ちっ」
舌打ちした仁が険しい顔で睨んだ。
「毅、成田には屋敷にすぐ来いと伝えろ」
「はい」
右にウインカーを出し大通りから小道へ抜けながら携帯で榊に連絡を取った。
「こんくらいで、騒ぐ、な」
「んなこと言ってる場合か!」
仁が怒鳴り、真っ青な顔で俺を見た。
「いつから我慢してやがった」
「……」