『若恋』若恋編
嫉妬
「……若、着替えを済ませたらりおさんを迎えに行きましょうか」
「ああ」
「わたしも行きます」
「俺は、ひとりで、大丈夫、だ」
「これでもですか?」
ぐっ、
支えてくれてた榊の拳が腹に食い込んだ。
「これでもですか?」
「…、バカ、ヤロが」
目の前が霞む。
軽く拳を当てられただけだが冷や汗が流れた。
「本当は行かせたくないんですよ。若が来るなと言ってもわたしはついて行きますから」
「俺もだ」
脇で仁がため息を付き、
「若は言い出したら利かねえからな、仕方ねえからお守りしてやるよ」
口の端だけを上げた。
「着替えをしたら行きましょうか」
この目でりおの無事を確かめるまで。
―――倒れるわけにはいかない。
四肢に力を入れて立ち上がる。
「行くぞ」