『若恋』若恋編
いつもと変わらないりおの表情。
見たものは夢幻だった。
そう安堵したはずなのに、りおの隣に当然のように立つ立花を見たら、また息苦しさが込み上げた。
「う、」
「若、大丈夫ですか?」
「こんくらい、大丈夫だ」
熱く込み上げる塊を飲み下して息を整える。
「またあいつか」
ちっ、
「仁、」
面白くない顔をした仁が舌打ちし榊が諌めた。
校舎からふたり並んで歩いてきて、目の前で樹に手を振ったりおが乗り込んでくる。
ちら。
窓の外は挑戦的な瞳がある。
「車を出せ」
長居は無用だ。