『若恋』若恋編
視界がぐらりと揺れる。
あの夢が。
りおを狙う金色の瞳が気になって。
あいつの影がちらつくのも苛立って胸が苦しい。
りおの心配を知りながらも脆く弱いのを見せたくなくて敢えて気丈に振る舞う。
「りお、俺にあまり近寄るな。風邪が移る」
「でも、」
「おまえは俺の心配はしなくていい」
「………」
ひどく傷ついた顔をしたのが窓に反射して映る。
「おまえは俺の心配はしなくていい。自分のことだけ考えろ」
「………」
「若、」
榊の声が厳しく遮る。
「わたし、ただ心配で」
「わかってる」
「若、りおさんを先に屋敷に」
「ああ、そうしてくれ」
「でも」
ひどく傷ついても俺を心配する。
「大丈夫だ、ちゃんと成田に診てもらう」