『若恋』若恋編




「悪かった。俺のことを心配してくれたのに」

「……ううん。いいの」

「りお」


首を横に振るりおがポロポロと涙を溢しているのに気づいた。



「りお、」

「奏さんが……血を吐いたのに」

「……気付いてたのか」

「気づかないわけ、ない」


ポロポロ。

後ろから抱き締めてる腕に力がこもる。



「りお」


大粒の涙が落ちて俺の腕に染みていく。


「……りお」


泣くな。

おまえに泣かれるとどうしていいのかわからなくなる。



「奏さんの、バカ」

「ああ、俺はバカだな」

「なんで自分を大切にしないの。わたしは奏さんが苦しむのはイヤ」

「………」

「わたしなんかより、自分を大事にしてほしいのに」

「………」



ポロポロ。

りおの涙が流れるのを後ろから抱き締めていてもわかる。
離したくない。


「奏さんの、バカ」

「………」


< 163 / 475 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop