『若恋』若恋編
長い夜
「若、りおさんが例の同級生から告白されたようです」
榊から沈んだ声で電話があった。
ガタッ
思わず立ち上がると、兄貴がふたり、
「どうした?」
書面から顔を上げた。
重苦しい空気の漂う大神物産本社の会長室。
兄貴ふたりと3人で極秘プロジェクトを検討していた時だ。
普段会議中には鳴らない電話に、何事かと思い出たら愕然とした。
「どうした?奏?何かあったのか?顔色が悪いぞ」
「親父に何かあったか?」
ふたりの兄貴は純粋に大神物産の顔だ。
親父と俺は裏の世界に身を委ねている。
「親父が狙われたのか?」
「いや、違う」
「留恵さんに何かあったか?」
「いや、母さんにも何も」
「じゃあなんだ?」
ふたりは揃って怪訝な顔した。
「おまえがそんな顔をするくらいだから何かあったんだろ?」
「榊に何かあったか?」