『若恋』若恋編
「よく考えてから返事をくれればいいと話して、りおさんは何も答えなかったそうです」
「………」
「若、」
「……俺にはどうもできねぇ」
もし、りおが選んだのがあいつならば俺は身を引くしかない。
ケガを負わせ傷つけた俺にはりおの幸せを願っても求める資格はない。
「りおさんがあの男のものになってもいいんですか?」
「……いいわけない」
「そう思うんだったら拐っちまったらどうだ」
「それはりおが望まない」
「じゃあ、このまま奪われるのを指くわえて見てるのか?黙って見てられるのか?」
「そんなの見てられるわけねぇだろがっ!」
ダンッ
力任せにコンクリート壁を殴り、
しん。
榊と仁が黙った。
「俺はりおがあいつを選んだとしても、……それでも守る」
たとえ、他の男のものになったとしても。みてるだけしか出来なくても。
りおを守るのだけは譲れない。
見つめているのが辛くても。
笑いかけられるのが俺でなく、あいつだとしても。
りおを守るのだけは譲れない。