『若恋』若恋編
狙う影
「学校は休んだらどうだ?」
無茶をさせた体が心配でりおが起き出すのを止めた。
「でも、樹にちゃんと断りたいから」
はにかんで笑うりおをたまらない想いで背中から抱き締める。
「あんま、可愛いこと言うな。絶対、離さねぇぞ」
「うん」
「樹にちゃんと話してくる。好きなひとがいるのって」
「ああ、」
シャワーを浴びて制服に着替えたりおを学校に送り届けた。
「奏さん、あのね」
榊が車のドアを開けて降り際にりおが振り返った。
「わたし、幸せだよ」
不意討ちの笑顔だった。
ニコッ。
風に髪を靡かせて校舎へと走っていく。
「やら、れた」
頭がクラッとした。