『若恋』若恋編
俺は榊と仁を信用している。
兄貴たちと違う裏の教育を仕込まれた俺は人を見る目は確かだと信じている。
だからこそ信じられない。
いまでも信じられない。
―――裏切り。
「……仁、答えろっ!!」
これが最後の問いかけだ。
「……俺の、元の名は天宮仁」
俺を見て、そして仁がりおをまっすぐに捉え、ゆっくりと話し始めた。
「俺の、元の名は天宮仁」
「―――あまみや?」
「わたしと同じ名字?」
腕の中にいるりおに視線を落とす。
「りおとは親戚か何かか?」
「………」
仁はりおの瞳を探るように見ている。
「……親戚?
正式にはどう言っていいのかわからない。
俺が小学校に上がる頃にはもう俺は天宮ではなくなっていたからな」
「りおと親戚ではないのか?―――それで?」