『若恋』若恋編
兄妹
「あんたは俺の―――妹だ」
……仁の妹。
目を反らすこともできないまま仁を見る。
仁の話した現実が、
―――受け入れられない
「若の、…鳥籠の中で暮らしていくよりも、空を自由に飛んでいけるほうが幸せだと思えたんだ。
だが、
妹は若の鳥籠の中で生きることを望んだ」
「………」
「俺はもしかしたら…そんなことより」
「そんなことより?」
「…堂々と、兄と名乗りたかったのかもしれない。
バカだな…俺は若を羨んで…」
「………」
両脇を掴み上げられて唇を切った仁が視線を落とした。
仁は孤独だった。
母と死に別れてからひとり生きてきた。
りおを、妹を見つけて大事に思ってたんだろう。
そのりおを俺が奪った。
「……奏、さん」
顔を上げてりおが俺を見つめる。
「………」
「…奏さん」
「俺は甘くねえぞ」