『若恋』若恋編
仁も知ってるだろう。
この世界に十年間生きてきたんだ。知らぬわけはない。
どこへ逃げても捕まる。捕まったら最後どうなるのか。知らぬ仁じゃない。
りおを拐ったなら尚更だ。
追尾され、どこまでも追われる。
「俺に刃向かったんだ。覚悟はできてんだろ」
裏切りは大きい。
仁は何も言わない。
覚悟は当についてるのがわかる。
「……そう、さん」
「おまえは黙ってろ」
目に涙を溜めたりおが震える手を伸ばした。
「やだ、……奏さん」
「これは俺たちの問題だ。口出しするな」
「……でも」
「特別扱いはしない」
「やだ。仁さんを……どうするの?」
「………」
「……うそ、仁さんをどうするの?」
指を詰めるだけじゃ済まされない。
りおには答えられない。
仁をこのまま置いておくことは許されねぇ。