『若恋』若恋編
罠
心配でいてもたってもいられず、屋敷から飛び出し、
「な、」
りおを乗せた車を見た時は喉の奥が引きつった。
フロントガラスには血飛沫。
何かを跳ねた後の名残がある。
そして助手席側のドアには榊の血だろう。乾いた跡もあった。
「りお!ケガは?」
「ないけど…榊さんが肩を撃たれて」
仁が降りてドアを開け、中からりおを抱き上げた。
―――温かい
傷を負っていないのを確かめギュッと目を瞑る。
この手に抱いた温もりに安堵した。
「……奏さん、榊さんがケガをしたの……」
りおの泣きそうな声に振り返ると榊はまだ助手席に座っていた。
窓を開けて笑いかける。
それだけで榊が動けない状態にあると知れた。