『若恋』若恋編
「丸眼鏡さんがいなかったら、ひかるも奏さんも助け出せなかったの……丸眼鏡さんがわたしを庇って」
「……わたしは、わたしの……できることをしただけです」
大きく上下する丸井の胸から鼓動が小さくなっていく。
「……娘が、生きていたら、りおさんと同じ、……くらいでしょうか」
穏やかな笑みを口元に浮かべりおをいとおしそうに見る。
もうその眼にも力がない。
「……丸眼鏡さん」
静かに大きく息をする丸井の表情は穏やかで。
いま。
丸井の命の火が燃え尽きるところだなんて信じたくはねえ。
りおが握った丸井の手のひらも体も次第に冷たくなっていく。
命の灯火が尽きてしまうのを感じずにはいられない。
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