『若恋』若恋編
「毅、…成田を呼べ」
「はい」
毅の目が少し赤かった。
「りお」
「うん、ひっく」
泣きじゃくるりおの手を血だらけの手で握った。
「どんなことがあっても、お前は俺のことを好きでいてくれるか?」
「うん」
「なにがあっても俺のことを嫌いだなんて言わないでいてくれるか?」
「うん、」
涙をポロポロ溢し俺を見つめる瞳が。
浮かんだ涙で歪む―――
「ずっと奏さんのそばにいるよ。嫌いになんてなれない」
「……わかった。
仁、りおを屋敷に。妹のいるとこに連れてけ」
泣きじゃくるりおの頬に指を伸ばして、けれど途中でやめた。
「行け」
「…奏さん?」
「なんでもない」
触れたらもう手離せなくなる。
その手を、その体を、その魂を。
「俺は―――お前に触れるのが怖いんだ」
「?」
「俺のいる世界はお前が今日見てきた世界だ。
―――逃げ出したいのなら
……今なら
―――手離してやれる」