『若恋』若恋編
「奏さん?」
「……このままで」
抱き締めても聞けない。
今、りおが呟いた言葉は誰も真実なのか知らない。
ただの想像でしかない。
「りお」
その華奢な体を抱きすくめ、柔らかな頬を包みくちびるを奪う。
ぴくっ
りおの浴衣の帯を解くと、襟元から滑らせた浴衣がパサリと足元に落ちた。
「……見ないで」
「俺のもんだろ」
首筋には昨夜わざとつけたくちびるの痕。
胸元にも赤い花を散らす。
「だめ、」
「だめじゃない。りおのすべては俺のもんだ」
りおに気づかれぬようさりげなく腹に触れる。
わからない。
触れただけでわからない。
聞けない。
「りお」
もしも。
おまえの腹に俺の子がいるならおまえはどうする?
聞きたくて聞けない。
喉まで出かかる台詞を飲み込んだ。
「りお」