『若恋』若恋編
それから。
りおが観たいと言ってた水族館に昨日の運転手とともに出掛けた。
体調を崩したこともあって今日はワゴン車だ。
ペンギンにイルカ、オットセイに餌やり体験ができるとりおが目を輝かせて喜んだ。
巨大なエイに、鰯の大群。
海底トンネルに潜ると辺りはすべて深い海の底の景色だった。
「わあ!すごい!」
はしゃぐりおについて歩く仁。
ふたりと一歩離れて毅と歩くと、
「りおさんの体調が良くなって良かったですね」
と、目を細めて笑った。
「一服しますか?」
「ああ」
見渡すとすぐ傍に喫煙室がある。
「若、火を」
手持ちぶさたでタバコを挟むが、この間禁煙してから吸っていない。
差し出された火を断った。
「辞めたんだ」
「若がですか?」
「ああ、りおは喉が弱いからな」
「そうなんですか」
毅が俺とりおを眺め穏やかに笑んだ。