『若恋』若恋編




「若は変わりましたね」

「そうか?どこがだ?」

「生き急いでいるような気がしてましたが、今は違います」

「生き急ぐ?」

「りおさんが来て、若だけじゃなくみんなが変わりました。榊さんも、仁さんも生きてるだけから、守って生きていくへ変わりましたね」

「……毅の話しは難しいな」


笑いながら、
喫煙所からりおと仁を見る。
傍目から見ると恋人同士のようだった。

はしゃぐりおに、追いかけ疲れる仁。


「………」


吸いもしないタバコを口にくわえた。


「……生き急ぐ、か」


間違ってはいないだろう。
りおと出会い、一瞬で魂を奪われた。
出会うまでは大神を守る為だけに生きてきた。

大の男を従えて、夜のあがりを回収して歩く。
女を抱き、大神の力を誇示すること。
それが大神の為だと思ってた。



「今の若は幸せそうです」

「……おまえは幸せじゃないのか?」

「幸せですよ。若と、みんなといられるだけで幸せです」




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