『若恋』若恋編
一也の含み笑いにつられて俺も笑った。
「奏さん!早く来て!」
「ああ、今行く!」
明るい笑顔のりおに手を振られて席を立った。
「一也、」
「はい」
「俺もおまえたちといるのが幸せだ」
「……若」
驚いて見上げた一也の瞳と一瞬だけ触れた。
「俺がりおとこうしていられるのはおまえたちが傍にいてくれるからだ。ありがとう」
「……若」
一也が笑ったのか戸惑ったのかわからない。
そのまま上着を肩に引っ掛けて喫煙室を後にした。
一也。
今の俺があるのは、おまえたちがいてくれたからだ。
おまえたちがいなかったら未来はなかった。
ありがとう。
―――ありがとう
そっと呟いた。