『若恋』若恋編
約束
屋敷に戻ってから二日後。
一階のテラスでりおと榊と話をしている隙に、ビタミン剤を処方したあの女医に電話を掛けた。
「私からは何も話すことはありませんよ」
「では、答えなくてもいい。今から話すのは俺の想像だ」
「………」
想像。いや、確信を話すと電話の奥で女医が穏やかに笑った気配がした。
「……りおさんはあなたにとって大事な方なんですね?」
「ああ、」
「それならば、大丈夫ですね?」
「ああ」
すべてがいとおしい。
出会った時から囚われていた。
「ありがとうございました」
電話を切り、ソファーに背を預けると、笑いが込み上げてきた。
小躍りしたくなるほどだ。
すぐにでもりおを抱き締めたい。
だが、まだだ。
りおが病院を受診するまでは。
確かなことがわかるまでは。