『若恋』若恋編
「榊、俺はりおの両親に会ってくる。その間、りおから目を離すな」
「……りおさんに、何か?」
榊は眉を潜めた。
スーツの上着に袖を通した俺をじっと見る。
「ガキができた」
すっ、見上げた榊の顔から色が消えた。
「まだ俺の想像でしかないがな」
「………」
静かに目を伏せたかと思うと榊がわかりましたと答えた。
「りおの両親へ挨拶してくる」
「はい」
「りおを頼む」
榊以外の誰にも告げずにひとりで車に乗り込んだ。
りおの両親にはすでに訪問する旨伝えてある。
両親が好きだと話していた菓子を買いふたりのもとを訪れた。