『若恋』若恋編
「……りおに何か、」
愛情いっぱいの家庭で育ったりおは妹とふたり、両親が大好きだった。
お茶を出しながら、りおによく似た母親が心配そうにたずねた。
父親も何事かと心配顔をして話し出すのを待っている。
「りおに、」
回りくどいことを言うつもりもない。
責任逃れをするつもりもない。
「りおの腹の中に、俺の子がいる」
「………」
「………」
一瞬の無言。
その後に、両親が穏やかに微笑んだ気がした。
「そうですか」
「ああ」
静かにお茶を啜りながら間を置いて言った。
「で、りおはなんと?」
「りおは自分の体の異変に気づいたばかりで、俺が子が出来ているのに気づいたことは知らない」
「………」
また少しりおの父は考えてそしてテーブルの上に湯飲みを置いた。