『若恋』若恋編
「今日、お買い物へ行きたいんだけど、いいかな?」
雑誌を傍らに置き、素知らぬ顔で今度は朝刊を広げた。
「いいが…りお、どこへ行く気だ?」
「え、と、夕御飯の材料でも買いに隣街まで行こうかなって思って。えと…ダメ?」
龍神会との決着がついた今は危なくないし。
と、りおが頭の中で必死で考えたであろうセリフを言った。
「買い物なら毅にでも頼んだらいい。あいつの料理の腕は確かだぞ。食材選びも頼んだらいい」
嘘がつくのが下手なりおはしどろもどろになった。
「あのね、下着も新しいの欲しいなぁって思ってね」
「じゃ、俺が車を出してやる」
「えっ?
あのね。でも、奏さん忙しいでしょ?悪いし」
「俺なら構わないぞ」
「え?
えっと…わたしひとりでゆっくり下着を選びたいから…って、ちゃんとわたしの話聞いてる?」