『若恋』若恋編
堂々と出かける支度をしたりおが俺の座っているソファーごとその細い腕で抱き締めた。
「じゃあ、買い物に行ってくるね」
「ああ、気を付けてな」
肩越しに振り返り、りおの額にキスを落とす。
「行ってくるね」
手を振って笑い扉を閉め出て行った。
「……行った、か」
窓辺に立ち、りおが敷地から出ていこうとする姿を見送る。
「二神産婦人科、か」
りおがパソコンで見ていた病院紹介の検索履歴で、確信する。
一件は評判がいい産婦人科だが、ここから近すぎる。
もう一件は隣街だが、交通の便が悪く医師もかなりの高齢だった。
「二神、か」
りおの検索は二神で途切れていた。
そこへ受診するに違いない。
「榊、今日の予定をすべてキャンセルしてくれ」
携帯で榊に連絡し、今日の予定をすべて後日に回した。