『若恋』若恋編
「行くぞ」
「どこへ?」
「始まりの場所に」
「始まりの?」
りおを車に乗せて始まりの場所へ向かう。
「え?……ここって」
「ああ、俺たちが出会った場所だ」
りおと初めて出会った場所。
学校帰りのりおが書店の前で襲われた俺たちを庇い撃たれた場所。
命を狙われた俺を両手を広げて庇い飛び出してきたりお。
芯の強い瞳に一瞬にして捕らわれて心臓を鷲掴みにされた。
そのふたりが出会った書店の前。
車を降りて、りおの手を引き、あの日と同じ場所に立つ。
「ここが、すべての始まりの場所だったな」
「うん」
「りおに確かめたいことがあるんだ」
「なに?」
りおの黒曜石の瞳がまっすぐに見上げて柔らかく細くなり笑った。
「俺に」