『若恋』若恋編
ふたり偶然耳にした会話を聞き衝撃が走った。
「女はもしこの計画がうまくいかなかったら毒を飲むつもりらしい」
「………」
「その毒もはじめから黒幕が用意してた。事が上手く行ってもいかなくても女たちは始末される。故郷には帰れねぇ」
―――始末
役に立てても立てなくても殺される。
役に立てたら口封じ。
役に立てなかったら毒を飲ませてでも消し去る。
裏の世界の常識だ。
「―――え?」
りおだけが意味わからずに俺を見上げるのを、わざと知らぬふりをして話をそのまま続けた。
「用が済めばあとは重石をつけ海にでも沈められる」
「そ、そんな」
「で、なければ。山に埋められるか。硝酸で溶かされちまうか」
「そんなの」
「どっちにしろ。このまま計画が進めば命はねえ」