『若恋』若恋編
「その体のどこに―――
俺を、みんなを突き動かすパワーがあるんだ」
りおを抱く鼓動が早い。
「奏さん?」
「もしおまえに何かあったら」
もしもおまえを失うことがあったら。
もしも何かがおまえの身に起こったら。
「そんなの何にもないよ。ちゃんと話をすれば分かり合えるよ」
「世の中はそんなに甘いもんじゃねぇ」
「だけど、このままふたりが不幸になるのを黙ってみてろって言うの?奏さんが狙われてるのわかってて黙ってみてろっていうの?」
「そんなこと言ってねえ」
「だったら!」
りお、おまえはわかってねえ。
ひとはそんな簡単な感情で生きてねえ。
「若、りおは」
仁が横から俺が拒否するのを遮るように告げる。
「わかってる」
俺を案じて、彼女らを案じてることぐらい。
りおが言い出したら退かないこともわかってる。
「りおは俺が止めても行くんだろう」
「うん」