『若恋』若恋編
「なんだ?知らなかったのか?」
「うそ」
「嘘じゃない。もう一月にもなる」
りおが顔をひきつらせたまま、それが次第に崩れて泣き出しそうな表情になった。
「ひかるが」
「ひかるが?」
「……落ち込んでたの。榊さんに電話しても忙しいって言われるって」
「………」
「このごろ榊さんがよそよそしいって」
「………」
「だから―――何かがあったのかなぁって、そう思ってたの」
はらり。
声を震わせてそしてその口元から嗚咽が漏れた。
何も言えないままりおが落ち着くのを待つ。
それ以上は俺から話しても無駄だ。
これは榊と向かい合いきちんときかなければならない。
「りお、落ち着いたか?」
「………」
「落ち着いたなら榊から話を聞け。俺が呼んできてやる」