『若恋』若恋編
襲撃
夜更け。
薄闇の中、術後に熱が上がったまま下がらずに朦朧としている彼女…りおを傍らの椅子に座りじっと見つめる。
「……ん、」
浅く呼吸し、時折、苦しげに身を捩り声をあげる。
額には滲む汗。
「……ん」
―――代わってやれたら
俺が撃たれた方がましだったのに。そう思えた。
りおの痛みが全部俺に移ってくれたらいい。
傷痕も、苦しみもすべて俺が背負うべきものだったのに。
「……りお」
ギュッ
両手を握り締める。
知ったばかりの感情に心臓が押し潰される。
名を呼ぶだけで苦しくなる感情に。
額に張り付いた髪を払うだけで震えてくる切なさに。
声を聞くだけで掻き乱される激情に。
―――押し潰される
「……若、」
後ろから静かに掛けられた声。
「……榊、か」