『若恋』若恋編

｢仁、りおを家に。妹のいるとこに連れていけ｣


泣きじゃくるりおの頬に指を伸ばして、だけど途中でやめた。



｢行け｣

｢…奏さん？｣

｢なんでもない｣



触れたらもう手離せなくなる。
その手を、その体を、魂を。



｢俺は―――お前に触れるのが、怖いんだ｣

｢？｣



｢俺のいる世界はお前が今日見てきた世界だ。

―――逃げ出したいのなら

……今なら

―――手離してやれる｣



仁がりおの頭をポンポンと優しく叩いて家に入るように促しても歩きださなかった。



｢迷わないよ、わたしは奏さんのそばにいるよ。

どんなに苦しくったって辛くったって逃げ出さない。
これからいろんなことがあっても離れたりしない」



｢―――そうか｣



意志の強い瞳で見つめ返したりおを、一度は触れるのを躊躇ったが引き寄せて力一杯抱き締めた。



もう迷わない。
俺の生きる道はひとつ。





｢俺は、これから龍神会を潰す！！｣








―――裏の世界の物語