『若恋』若恋編
「お嬢ちゃんは明日の朝にはだいぶ楽になるだろう」
「そうか、よかった」
成田のお陰だ。
腕のいい成田がいてくれなかったら指は腐り落ちてた。
肘の骨折は手術が厄介なことも聞いてたし、順調に回復してるのは成田のお陰だった。
「だからよ。一時間でいいから眠れ」
奏が倒れたら俺が榊になんて言われるかたまったもんじゃねぇ。
「ありがとな、」
「わかったら、壁に寄りかかってでもいいから寝ろ」
「ああ、」
彼女を運び込んでから初めて気持ちにゆとりができた。
倒れたりしちゃ榊に俺がなんて言われるか。
成田が頻りにそう呟いていた。
そして、りおの姿―――安定しつつある姿を目にした後、壁に寄りかかりながら居眠りをする若の横顔を榊が見つけた。
―――若、
あなたにとって彼女はいったい何なんですか?
榊の呟きは
誰にも聞かれることはなかった。