『若恋』若恋編
3日目の夜。
りおの眠っている部屋に近づく足音。
パタパタパタ
スリッパの音がドアを開けた隙間から聞こえた。
白いカーテンに揺らぐ細い人影。
「彩萌だけど……起きてる?りおちゃん?」
押さえて小さくしてる声。
「起きてるよ。熱も下がってきたし体の痛みも取れてきたの。ねえ、傍に来て座って」
昨夜と同じに成田の女が点滴棒を引き摺りながら物音を忍ばせて入ってくる。
「熱はどのくらい?」
「7度3分。でももう大丈夫だよ」
そして昨夜より会話が弾んで、ふたりの笑いを押さえた声がする。
他愛のない話。
お互いの趣味とか好きな作家や芸能人の話。
話が尽きず昨夜よりも長く話をしていたのを、月明かりを浴びたまま廊下で聞いていた。
「……だ、れ?」
薄闇に紛れて立つ俺に廊下に出てきた成田の女が顔色を変えた。
「……俺だ」
「え、大神さん?」
驚いて成田の女が目を大きく見開いた。
「りおちゃんを夜中こうして見守ってた、の?」