『若恋』若恋編




「……様子が気になったからな。今来たんだ」

ずっと夜中もこうして見守っていたとは言えない。
偶然を装って今来たフリをした。

「うそ」

「ウソじゃねえってことにしといてくれ」


真っ直ぐに向けられた視線に俺は諦めて笑って受け取り、成田の女に早く部屋に戻って寝ろと言った。



「……お休みなさい」

「ああ、おやすみ」




パタン


部屋の扉が閉まった。

その瞬間。




ガッシャーン

点滴棒が派手に倒れた音が院内に響き渡り、慌ててりおの寝ている部屋へと飛び込んだ。



「りおっ!!!」



飛び込んだ目の前にはまだ動きが取れずに点滴がぶら下がったままのりおの姿があった。


りおの姿がある。
これは…いったい。

わけがわからなくて一瞬頭の中の機能が停止した。



「……隣、ぽぽちゃんの部屋から?」

「成田!」



瞬時に理解して叫んで廊下へ飛び出した。



「前広!拓也!おい、見張りはどうなってる!?」


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