『若恋』若恋編
考えこんでいると、成田の車が戻ってきた。
「なんかあったのか?」
ガレージ前で成田が眉をひそめた。
「物音がして部屋を覗いたらおまえの女の姿が、」
「ぽぽが?」
「いなくなってた」
「!」
「たぶん、龍神会のやつらに連れ去られたんじゃねえかと思う」
顔色を変えた成田が最後まで話を聞かずに二階へ駆け上がった。
床に血の擦れたような跡。
開け放たれた窓に揺れるカーテン。
そこには成田の女の姿はない。
「成田」
「やられた」
成田も壁を叩き俺も歯噛みした。
「りおと間違われて」
「………」
一瞬無言になり、その暗い空間を引き裂く電話の着信音がした。
『若、裏口に2台怪しい車が停車しました。中から龍神会の下っ端が降りてきて…どうしますか』
「腕一本や二本折っても構わねえから捕まえろ。成田の女が拐われた」
『……成田の?
承知しました。捕まえます』