『若恋』若恋編
電話を切り、隣の部屋でりおが無事で眠っているのをそっとドアを開けて確かめる。
静かな寝息を立てている。
昨夜とは違う穏やかな眠りについている。
その眠りを妨げるやつらが迫っているのをこれから叩き潰す。
「成田、おまえはここにいてりおを見ててくれねえか?」
小声で頼むと成田が首を横に振った。
「おまえらにだけ任せておくわけにいかねえよ。俺がミスったんだ。ガレージからの出入りはちょうど死角になって見えづらい。誘い出された時におかしいって気づかなかった俺に責任がある」
黙っていたら成田も飛び出していくに決まってる。
そうはさせたくねえ。
「おまえを巻き込みたくねえんだよ。成田の親父さんには随分と世話になったしな」
「ぽぽが拐われたのを俺に指をくわえて見ていろっていうのか?」
成田は男だ。
真っ直ぐに俺を見て言った。
「奏、俺も連れてけ。俺がこの手で救い出す!」