『若恋』若恋編
横抱きしたまま屋敷の二階へ。
エレベーターで二階へあがり指紋認証に指を翳すとロックが外れた。
「今日からここに住むことになる。奥の部屋がりおの部屋だ。ひとつ言っておくが、二階へは家族以外誰もあげないでほしい」
「はい」
奥の部屋にりおの必要なものをすべて用意してある。
ベッドへ下ろすとりおが言った。
「お、大神さん。ありがとう」
「りお」
「はい」
「俺のことは名前で呼べ。大神さんて呼ばれるのは体が痒くなる」
「……大神さんの名前?」
「そう。奏でると書いて奏」
「……奏さん?」
「それでいい」
……奏さん
復唱する薄いくちびる。
「下には榊や仁たちが住んでる。俺がいない間に何かあったら電話しろ」
「電話?」
ポケットからグリーンの携帯を取り出してりおの膝に置いた。