『若恋』若恋編
「これ、」
「りおの携帯だ。あの日壊れて使えねえからな、新しいのを用意した。色は俺が勝手に選んだ」
勝手に選んで悪かったな。
「ううん。ありがとう」
りおが新しい携帯を包帯だらけの右手でそっと包んだ。
「りお、」
「ん?」
りおが俺を見上げた。
「俺とここに住むのは不安じゃねえか?」
キョトンとしたりおの目が更に丸くなった。
「俺はおまえを傷つけたヤクザ、」
「違うよ。奏さんはわたしを助けてくれたんだよ」
「………」
「奏さんといることが不安とか怖いだなんてないよ」
「………」
「それに知ってるの。
奏さんを護ろうとして榊さんが前に出た時にも、わたしが前に飛び出した時にも庇おうとしてくれたこと」
「………」
「ケガしたわたしを見捨てて逃げることだってできたのに、奏さんたちはそうしなかった。病院にいる間だって、ずっと眠らないで傍についててくれたんでしょう?」
「……ちが、う」