『若恋』若恋編
恋敵




―――立花樹




りおを学校まで毎日送り届ける。
校門の前にはあの日会った長身の男。立花樹が当然のように待っている。


校門前で榊がドアを開けりおが降りる。


「奏さん、榊さん行ってきます」

「ああ」

「りおさん、気をつけて」

榊が穏やかな笑みでりおの背中を見送る。

校門前の柱に寄りかかり待っていた立花樹がりおの元へ歩いていく。

ふたり笑い合う。

りおのカバンをさりげなく持ってふたり並んで校舎の奥へと消えていく。



「く、」

見ていることしかできない。

その横顔を。
後ろ姿を。
笑い合うふたりを。

校舎の奥へと消えていくふたりの背中を見ていることしかできない。



―――行くな




誰にも言えない想いは握る拳に隠す。




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